ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅩⅨ 

 目覚めると、真美は既に起きていた。キッチンからカタコトと音が聞こえる。顔を覗かせると、直ぐに気付き笑顔で挨拶してきた。
「おはよう、朝食の支度ができたから、早く顔を洗ってね」
「やあ、おはよう・・」
「着替えを、ベッドの横に用意してあるわ」
「えっ、着替え?」
 俺は、急いで顔を洗い、寝室へ行く。ベッドの脇に新しいネックのシャツとセーターが置かれていた。俺は信じられない気持ちで、手に取ってみる。茶系の厚手のセーターであった。俺好みの色と柄。
「どう、着られるかしら?」
 早速着てみる。俺にぴったりだ。
「うん、ぴったりだ。それに、好きな色だよ」
 真美は嬉しそうな顔で、目を輝かせた。
《恐れ入ったなぁ。真美には敵わない。どこまで俺のことを知っているのだろうか》
「良かったわ。あなたが嫌がって着てくれないと思い、心配していたの」
「そんなことはない。とても嬉しいよ」
 俺は真美を引き寄せると、力強く抱き締めた。ほんの僅か抱かれていた彼女は、朝食のことを思い出し俺から離れる。
「さあ、早く食べましょう」
「うん、お腹が空いた」
 俺は新しい靴下を履き、居間のテーブルに座った。中庭のガラス戸越しに、秋の日差しが居間全体を明るく照らす。ふたりは向き合い、朝食を食べ始めた。
《これが、これから始まる生活。果たして継続する幸せなのか。幻だったら、相手が神であろうが、絶対に許さない》
「どうしたの、真剣な顔して・・。料理が美味しくないの?」
「いや、とても美味しいよ。この雰囲気は、初めて経験する幸せな気持ちだ。これが家庭の景色なんだね」
「そうよ。私たち家族の愛の始まりなの」
「えっ、家族愛・・」
「世の中で多くの人が、捜し求めるものよ」

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