ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅩⅣ 

「ううん、誰からも。ただ、何故か記憶に残ってるの」
「多分、お母さんが、子守唄で歌ってたかも知れないね」
「そうかもね・・」
 真美が紅茶を運び、洒落たガラス張りのローテーブルに置く。そして、俺の横に座り、体をぴたりと寄せた。真美の熱い体温が俺の体に侵略を試みる。俺の軽い脳は、彼女の熱い息遣いに反応し独り喘ぐ。だが、心の奥は冷静な判断を強く求めていた。
《ただの煩悩で一線を越えることは、いとも簡単だ。でも、まだ運命の意味が理解できないまま、超えることは彼女を不幸にするだけだ。俺だって、》
 真美の甘い香りが、俺の鼻腔を刺激する。俺はローテーブルのカップを手に取り、熱い紅茶に神経を集中させた。
 真美がスーッと席を立つ。俺は一瞬、彼女に目を向けてしまった。真美の視線と絡み合う。
「私、シャワーを浴びて来るね。あなたも後で浴びるでしょう?」
「あっ、うん、でも、着替えが無いから・・」
 俺は上手く逃げたつもりであった。
「うふふ・・、新しいの買ってあるわ」
 真美の言葉は悪魔の囁きに聞こえ、俺の妥協を強引に引き寄せる。
「嘘だろう? 俺のサイズを知らないくせに」
「だから、MとLの両サイズを買ったの」
「参ったなぁ~。真美には、かなわないや。降参だ・・、アッハハ・・」
 俺は笑うしかなかった。
「そうでしょう。ムフフ・・。なんなら、一緒に浴びる?」
 彼女の媚びた眼差しは、俺の心を震撼させる。軽い脳は完全に体たらくで、真美の従者に成り下がっていた。
「いや、いいよ。先に入ってくれ。俺は後でいいから」
「そう・・。じゃあ、いいわ」
 彼女は不満そうな態度で、浴室に姿を消した。俺はホッと一息入れる。残りの紅茶を飲み干すが、渇いた喉を完全に潤すことができなかった。
《真美は初に見えるけど、男を知っているのだろうか。俺は恋さえ初めてなのに、どう対応すれば良いか分からん。困ったなぁ・・》
 浴室から、シャワーの音が反響してくる。俺の動悸がさらに高まり、治まりようが無い心境になった。浴室の戸が開き、真美が俺を呼んだ。
「ねえ、タオルを忘れちゃった。そこに有るでしょう? 持って来て、お願い」
《おい、嘘だろう》
 確かに、ソファの横に置いてある。
「お願い、早く持って来てよ!」

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