ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 Ⅰ 

 今、人は夢の中にいる。本当の現実社会を知らない。それで良いのかと悩む。いや、悩む必要はないのかも・・。夢こそ現実だからだ。人は夢を見ながら生きている。最後の時に、現実を知る。歩んだ人生を後悔するか納得させるか、自らに判断を委ねるためであろう。
 人の生き方は、産まれた環境でほぼ決まる。だが、運命が多くの道を選択させ、環境を徐々に変えて行く。多くの選択こそ、夢である。どの道を、どのように選ぶか。もし、まったく同じ道を選ぶ人がいたとしても、産まれた環境が異なるので同等の生き方は有りえない。
 但し、重要なことは産まれた環境ではない。大切なことは、感情である。運命が与えた道を、己が信じた感情で選択すれば、人生が大きく変わる。
 運命は不思議な言葉だ。かっこいいと憧れる言葉でもある。だが、運命の真実は、不公平で卑劣な言葉だ。多くの人が運命の言葉を信じ、翻弄されている。時には、運命なんか信じないと、豪快に広言を吐く人もいるが、実際は翻弄され苦渋を味わった人に多い様だ。
《確かに、俺も翻弄されているひとりだ。運命なんて信じたくない。でもなぁ~》
 俺は、中央公民館で開かれた無料のセミナーに参加した。チラシに『あなたの運命を考えよう・・』と書かれてあり、ちょっと興味を持ったからだ。
「君にとって、運命とはなんですか?」
 俺は一瞬、言葉が見つからず返答に窮した。周りの参加者たちも首を傾げている。
「ん~、難しい質問で、難しい答えです」
 仕方なく、咄嗟に出た言葉だった。
「そうです。正解です」
 講師が、手を叩きながら私の答えを絶賛する。俺は唖然とした。
「えっ? 意味が分かりません・・」
「いいんですよ。運命はプロセスではなく、結果です。生涯の運命を解き明かすことは無理です。難しいことが運命ですから・・。運命を長い期間で見てはダメです。夢をたくさん選びなさい。その一つ一つが運命ですから、確認しながら人生を歩むんです」
 俺は耳を疑う。信じられないが、この講師の説明は俺の心肝にドスンと大きな穴を開けた。
「でも、先生! ますます混乱して、意味が分かりません」
「私には、君の運命が見えています」
「本当ですか? どの様に、見えるのですか?」
「君の運命は、真っ白です。それは、君の心を反映しているからですね」

×

非ログインユーザーとして返信する