ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   恵沢の絆   ⅩⅢ 完 

 ホテルの部屋から、兄の家へ電話した。
「はい、金井ですが?」
「あ、お義姉さん? 輝久です。高崎に着きました」
「ああ、お疲れ様。長旅で疲れたでしょうね。今は、どこに?」
「駅前のホテルです。しばらくしたら、病院へ行きます。貴志君に伝えてください」
「まあ、そうなの・・。今まで病院にいたのに・・。でも、どうにか間に合ったようね。良かったわ。輝ちゃん、ありがとう・・」
 私は、そっと受話器を置いた。
 上着の内ポケットに手を触れた。孫のモニカから預かった手紙が、大事に納めてある。ブラジルを離れる空港で、見送りに来た彼女から渡された。機内で密かに読むと、日本語学校で習った日本語の手紙であった。私の心は熱くなり、兄の喜ぶ顔を想像する。兄の恵沢の絆が受け継がれていると確信した。
【じいちゃんのお兄さんへ。
 一度も会ったことが無いけど、元気になってくださいね。
 じいちゃんが悲しみますよ。
 神さまに、お祈りしています。    ブラジルのモニカ・サオリ】
 病院の受付で、兄の病室を確認する。五階の五号室。エレベーターから降りて、静かな廊下を歩く。兄の部屋から、年配の看護師が出て来るところであった。
「今晩は、兄の容態はどうでしょうか?」
「あら、ブラジルの弟さんですね。難しい状況ですが・・」
「今、部屋に入れますか?」
「どうぞ、あなたを待っていますよ」
 看護師は目礼すると、ナース控室へ戻って行った。部屋の戸口が、少し開いている。私は、そっと中を覗く。薄明りの下、ベッドに横たわる兄の姿が目に入った。臆病風に吹かれた両足を、力ずくで病室内へ押し込む。
「兄ちゃん・・」

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