ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅧ 

 彼女の言葉は、説得力のある言葉であった。黒ピカやゴキジョージは、黙って聞くしかない。
「でも、愛することは、好きを越えた次元の異なる普遍的な感情なの。男女の愛、家族の愛、子弟の愛など。私とセニョール・ゴキータの愛は、仲間の愛なのよ」
「ちょっと待って、なんなの、その普遍的な感情って? 格好いい言葉だけど、オイラにはぜんぜん意味が分かんないよ」
《なんと見事な真髄を極めている。それも的確な言葉。だけど、ヤツには無理だろうな。理解するには経験不足だと思う》
「クロピーカ! 今のあなたには、理解できないかもしれない。でも、必ず理解するときが、やって来るでしょうね。普遍的な感情の意味は、誰もが共通する心の動きなの。
 ただ、愛は好きより意味が深く、外見に囚われず心の奥から自然と湧き上がる感情よ。無理やりに感じることではないの。分かったかしら?」
 黒ピカは、懸命に考えていた。しかし、ヤツらしい答えを導いた。
「うん、なんとか分かった気がする。例えば、目の前に饅頭がある。オイラの好きな饅頭だから美味しいと思うより、温かく心を込めて作った饅頭だから、美味しいと思う。その違いかな?」
「うふふ・・、クロピーカ。あなたらしい答えね。そうね、そうかもしれない。見た目で判断して、毒饅頭の罠に騙される仲間がたくさんいるわ」
「実はオイラの家族も、弟が持ち帰った毒饅頭を食べて死んだ・・」
《お、お前は知っているのか? 家族のことを・・》
「黒ピカよ、人間にも普遍的な愛という感情は存在する。ただ、人間どもの愛は、憎しみや妬み、高慢などを生み出し互いに傷つけあう。時には、相手を死に至らしめる感情に変化させる。
 しかしだな、ワシらの仲間には、無情な仕打ちに変化する感情を持っておらん。
 ワシもセニョーラを仲間として愛している。事実だ。ただ、ゴキ江に対する愛とは、ちょっぴり異なる愛だが・・」
「リーダー、ゴキ江さんに対する愛は、本物ですね。オイラのゴキ江さんに対する愛は、仲間の愛ですから心配しないでください」
《むむ・・、お前らしい解釈だ。仕方ない、いいだろう》
「セニョーラ、ごめんなさい。からかったことを許してください。私もあなたが好きです。ハワイに帰ったら、あなたに似た仲間と結婚します」
「嬉しいわ、ゴキジョージ! 必ず幸せにしてね。バイ・コン・デウス(神のご加護を)あなたも立派なリーダーになれるわ。クロピーカと協力して、仲間のために頑張ってね」
「はい、セニョーラ。リーダー・ゴキータ、大変失礼しました」
「ああ、いいよ。もう、忘れなさい」
 そこへ、実行委員が分科会の報告がまとまったことを、マリアブリータに告げた。

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