ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅤ 

「いつの日か、人間どもによって、生き物の住めない地球にされてしまう。人間どもは宇宙開発と偽り、ヤツらだけが助かる、別の星を探しているらしい。このワシらの大切な地球を、助けるつもりはない! 捨てて逃げるつもりだ! 本当に卑怯なヤツラだ! 人間どもには頼る神や仏がいるが、ワシらには頼る神はいない!」
 ワシは我を忘れ、興奮して怒鳴ってしまった。会場も大騒ぎだ。
「ジャパニーズ、あんたが我らの神だ!」
「ハポネース、救いのデウスだ!」
「そうだ、そうだ、ワイワイ、ガヤガヤ・・」
《あっ、しまった! これは、まずい》
 マリアブリータが、興奮する会場内を制止させようとする。だが、一部の仲間が激しく騒ぐ。
「静かに! 皆さん、静かにしてください!」
 演壇の近くにいた黒ピカが、猛スピードで騒ぐ仲間に向かって行く。その後ろには、ゴキジョージの仲間たちも走っている。
「よ、よせ! やめろ、喧嘩はダメだ!」
 ワシは叫び、止めに行こうとする。隣にいたマリアブリータが、ワシを押さえ黙らせた。
「待って! クロピーカは、争わないで必ず鎮めるわ。私は信じている・・」
 黒ピカと先頭で騒ぐ仲間が、対峙したまま微動だにしない。ただ、ヤツの触角だけが引っ切り無しに動く。会場全体が固唾をのみ動静を見守る。五分、十分と重苦しい時間が過ぎた。
 相手のピーンと鋭く立つ触角が、穏やかに下へ向き始める。黒ピカが一歩前に出て、両方の触角が絡む。周囲から歓喜の声が上がった。
 その様子に、ワシは感情を抑えられず、隣のマリアブリータを抱きしめた。
「やりましたね、セニョール・ゴキータ。彼なら信じられる。良かったわ・・」
 マリアブリータがしなやかな触角を叩き始めると、会場内も徐々に連鎖し称賛を浴びせた。
「黒ピカよ。お前はどんな話をして、和解ができたのだ?」
 演壇の下へ戻った黒ピカに、気になっていたことを聞いた。
「いや、何も話しません。相手の目を見て、石に電信柱でした」
「えっ? ・・」
 ヤツの思いがけない答えに、ワシの体も脳も固まってしまった。
「オ・ケ・アコンテッセウ(どうしたの)?」
「あ、いや、問題ないです」
《信じられん。ヤツは言葉を使わずに心を通わせたのか・・、本当に・・》
「そう、じゃあ、続けましょう」
「はい、いいですよ」
「それでは、セニョール・ゴキータの演説を再開します。終了後に分科会を行ないますので、宜しくお願いします」

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