ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅢ 

「え? チーズが嫌いなの? 面白い、うふふ・・。でも、セニョールもブラジル語が話せますね? どちらで・・」
「ワシは、単語を並べるだけです。棲み処がセントロ・コムニターリオ・クルツラール(中央公民館)という場所で、ポルトガル語の授業を聞いてました」
「それは、素敵ですね」
 ワシは輪の中心にいる黒ピカを見詰める。
「いや、ワシの連れの黒ピカは、この旅で、色々な言葉を覚えてしまった。それも、アマゾンのインディオ語まで・・。驚きですよ。ウフフ・・」
「セニョールは、心からクロピーカがお好きなのですね」
「はい、最初は心配していましたが、この旅で成長する姿が好きになって・・。とても嬉しく幸せです」
「確かに、仲間の中心にいますね。日本支部から、セニョールとクロピーカの推薦状が届いたときから、私は心待ちにしていました。期待どおりの方々で、良かったわ。彼は、あなたの後継者に選ばれそうね」
「オブリガード(ありがとう、男性の言葉)、セニョーラ・マリアブリータ」
「いいえ、こちらこそ。オブリガーダ(ありがとう、女性の言葉)、でも、彼にセニョールの面影が感じられるわ。思い過ごしかしら・・」
《いや、いや、参ったなぁ》
 進行係りが、マリブリータを呼ぶ。
「エスタ・ベン(分かったわ) セニョール・ゴキータ、準備は宜しいですか?」
「ああ、問題ない」
「では、行きましょうか?」
 ワシは、黒ピカに声を掛け壇上へ向かう。
「おい、黒ピカ! ワシは講演に行くからな・・」
「アッハハ・・。はい、はい、リーダー。皆と一緒に聞いていますから、頑張ってください」
《まあ、いいや。どうせ、話の意味など理解しないだろうから・・》
「ただ今より、日本支部代表のセニョール・ゴキータをご紹介します」
 マリアブリータが伝えると、会場内は触角を叩き合い騒然となった。
「み、皆、うっうん。ゴッホン!」
 うまく声が出ない。会場がシーンと静まり返る。ワシは咳払いをして、喉の調子を整えた。チラッと黒ピカの様子を窺うと、心配そうにワシを見詰めている。
「皆さん・・、日本のゴキ太です」
 どうにか、話すことができた。
「ワ~ッ、ワ~ッ」
 会場内が再び盛り上がる。
「ありがとう、センキュウ、オブリガード、メルシー、グラシアス、シェイシェイ、ダンケ、スパシーバ、コクン・カップ、コマッスミダ、マハロ・・。それでは・・、ワシの話を聞いていただきたい」

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