ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 Ⅴ

 夏の虫たちの『リ~ン、リ~ン』と軽やかな音色だけが聞こえる。静かな夜に戻った。
「黒ピカよ! ワシは決めたぞ」
 ふと心に浮かんだ案を、出し抜けに告げる。黒ピカは驚き、ピョッコと飛び跳ねた。
「えっ、えっ、何を決めたのですか?」
「渡航方法だ! 近くの烏川から利根川を経て、途中の江戸川を抜け東京湾に出る。それから、潮風を利用して横浜港へ向かう。横浜港から南米行きの貨物船に乗る計画だ」
 黒ピカには、想像もつかない。ぼーっと聞いているだけだ。
「それも、今すぐに実行だ。グズグズするな、さあ、行くぞ!」
「ま、待ってください。な、何で川を下るのですか?」
「葉だ。葉のヨットを作って下るのさ」
「歯? 歯ですか? どこの歯医者でヨットを・・」
 黒ピカは、イメージが思い浮かばない。ヤツの唖然とした顔に、ワシは愉快で笑ってしまった。
「あっはは・・。お前には想像もつかない案だろう。虫歯の歯ではない。木の葉っぱだよ。やや大きい葉をヨット代わりに浮かべる。鳥や川魚に注意しながら川を下るのさ。これが一番安心で、早く行ける方法だ。ワシの頭は賢いと思わないか?」
「なるヘソ・・。ところで、食事は・・?」
「お前の頭の中は、食べることだけか? 先にしっかりと食べておけ! 水は捨てるほど周りにある。それで、十分だろう・・」
「え~、そんなのないよ~」
「じゃぁ、一緒に行かなくても結構だ。ワシひとりで行くからな・・」
 ごねる黒ピカを置いて、ワシはさっさと烏川へ向かった。
「嫌だ~。我慢するから、置いて行かないでぇ~」
 一時間ほどで、烏川に辿り着く。川辺でヨットらしい葉を物色した。良さそうな葉を見つけると、二匹で持ち上げ川面に浮かべる。
「黒ピカ! さあ、先に飛び乗れ」
 ヤツは尻込みしながら、触角を震わせた。
「リーダー、どうしよう。あ~ぁ、ジャンプした経験はあるけど、飛んだことは一度もありませんよ・・」
「何を弱気なことを言っておる。三億年前の代々先祖様(プロトファスマ)は、地球上の生き物で最初に空を飛んだ種族だ。その血筋を受けているお前は、必ず飛べる。だから、自信を持って飛べ!」
「でも、川に落ちたら・・、死んじゃうな。あ~ぁ、怖いよ~」
「ブツブツ言わずに、早くしろ!」
「分かりましたよ! 飛びますよ! 飛べば宜しいんでしょう・・」
 黒ピカは、震えながらも捨て鉢になり、翅を大きく広げた。清水の舞台から飛び降りるつもりで、パッと空へ舞った。だが、ヨットの上をバタバタと飛び回り、簡単に乗れそうもない。

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