ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 Ⅳ

「リーダーの方が、もっと慌てていますよ」
《当たり前だろう。お前に露見したと思った。気付いていないらしいな。それにしても、そんなに似ているのかなあ? 黒く光って母親似と思うが・・》
「うっ、ゴッホン・・、ゴ、ゴキ江、それで支部からの内容は?」
「ええ、それが渡航のことなの。飛行機は空港の検疫検査が厳しいから、比較的に安全な貨物船を利用しなさいと言ってきたわ」
「えっ、貨物船? それでは大会に間に合わない。困ったなぁ、どうしよう」
 ワシは頭を触角で抱え、ガサゴソと動き回ってしまった。
「心配ないわ、あなた! 大会は一ヵ月後に延期よ」
「なんじゃ、それは? どうしてだ?」
「中南米でジカ熱が流行しているの。オリンピック・パラリンピックが開催されるブラジルでは、大きな問題になっているわ。あなた、知らなかったの? 悪い蚊がジカ熱を伝染させている。町中に殺虫剤が撒かれ、とても危険ですって・・。あなた、今回は欠席したら? 私、不安よ」
「そうか、蚊のヤツらめ迷惑千万だな。人間どもから嫌われて当然だ。だが、欠席する訳には・・」
 動き回るのを止め、ワシは静かに考えた。ワシの様子に、黒ピカが恐る恐るゴキ江に近寄る。
「コラッ! 最愛の妻に何をするか! ワシの許しもなく近寄るではない」
 不意を突かれた黒ピカは、サッと凄い勢いで葉の下へ逃げ込む。
《なんと、見事な動きを・・。あの速さなら金メダル候補だ。それにしても、笑わせるヤツだなぁ。フフフ・・》
 ワシが本気で怒っていないと分かり、葉の下からソーッと頭を出す。
「ど、どうも失礼致しました。奥さまが、とても若くお美しいので、つい・・」
「ムフフ・・。ワシも、そう思っておる。うん、やっぱりお前とは気が合いそうだ」
「まあ~、恥ずかしいことを言わないで・・。それで、欠席するの?」
「いや、行かねば・・。日本代表として行かねばならない。どんな危険が待とうが、ワシは行く」
「やはりね。あなたなら、必ずそう答えると思ったわ。それでこそ、私のパパね。行ってらっしゃい。お土産は、無事に帰って来ることよ。いいわね!」
 彼女のしなやかな触角を、ワシの逞しい触角に絡ませる。嬉しかったが、辛い別れは心が痛む。
「ああ、子供たちのことは頼む。ゴキ江、愛しているからな!」
 ワシの言葉に、ゴキ江は立ち止まる。心細い素振りを見せ、暗闇の中に姿を消す。その後ろ姿に、ワシはがっくりと項垂れてしまった。
《ク~ッ、ワシの心は、ズ・タ・ズ・タだ~ぁ!》
「リーダー・・」
「う、うん。大丈夫だ」

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