ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  漂泊の慕情  Ⅲ

「そうだわ・・、明日、仕事の合間に電話をしてみようかしら・・」
 翌日、昼時間に彼の携帯へ電話を掛けてみるが、一向に繋がらない。仕事を終え、再度掛けてみるが通話不能であった。
 その翌日も、また翌日も掛けるが、やはり通話不能である。私は胸騒ぎを感じた。
 交際初めて直ぐに、職場への電話はしないと互いに約束しあった。
「どうせ、会わないと振られたんだから、問題ないはずよ。よし、掛けちゃおう」
 私は思い切って、職場に電話した。意外なことに、彼は退職をしていたのである。
「え~、どうして、どうしてなの? 私、信じられないわ」
 彼は自分の仕事に誇りを持ち、いつも自慢していた。それなのに、辞めてしまった。私は信じられず、しばらく唖然とする。
 今年の春、彼は係長に昇格。記念に、彼が好きな色のネクタイを探し、私はプレゼントした。
「これで、来春には・・、申し込めるかなぁ・・」
 プレゼントされたネクタイを見ながら、意味深なことを私に囁く。囁かれた私は、彼の偽りのない瞳に嬉しい戸惑いを隠せなかった。
 その夜、私は誘われるままに体を許した。その時に、結婚を承諾したつもりでいた。もちろん、彼も理解していたと思う。
 それが、半年後に破局を迎えるなんて、想像できる訳がない。
「彼の心意を確かめないままなんて、私は嫌よ。本当に狡いわ」
 私の小さな脳は、この問題から一時も離れず悩み続ける。
 休日に、彼の好きな場所に行き、見覚えのある姿を探し回った。残念ながら、彼が来たという痕跡は見つからなかった。
「これほど探しても、無理なのね・・」
 諦めるより、悔しさが湧きあがる。
 彼の退職が、何を意味するのか見当がつかない。不思議な印象を受けた。確か、彼の仕事は特殊な知識を必要としている。だから、地方の高崎では、簡単に転職できる企業は数少ない。非常に困難であると彼が言っていた。
「東京かしら。それなら、別に分かれることないわ。会社を辞めて、私と会わない。普通なら、そんな言葉を使うかしら。妙な言い方ね・・」
 考えれば考えるほど、私の心は混迷する。精神的に疲れ始めた。
 その、一週間ほど経った日に、一通の封筒が届く。差出人は知らない人の名前が書かれてあった。私は悩んだ。
「開けて見るべき・・、いや、知らない人からの手紙は、無闇に見ない方が・・」
 テーブルの上に置いたまま、数日が過ぎた。

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