ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

忘れ水 幾星霜  第四章 ⅩⅢ

「亜紀、早く試着して、見せてよ」
 彼女はおどおどと試着室に入り、怖々と着替えた。姿見の自分に心が奪われる。
《まあ、なんて華やかな色、ワン・ポイントの白い花びらが素敵ね。この色は、あれ以来ね。輝君、覚えているかしら》
 恐る恐る試着室から出る。
「マルシア、ボニータ(綺麗)だ。誰かと思ったよ」
「やはり、亜紀にぴったりね」
 輝明は、遠いあの日の服装を思い出した。
《水沢山のハイクの朝、オレが見惚れた色彩と同じだ》
「うん、亜紀さんには浅緑の色が似合う。それに、同じヘア・バンドをすれば最高だ」
《えっ、もしかして、あの時の服装を忘れていないの?》
 しかし、値札を見て驚く。
「ダメ、こんな高価な服は着られないわ」
「いや、ボクからのプレゼントだ。結婚記念と思って、受け取って欲しいな」
「そうしなさい。輝坊ちゃんは、人にプレゼントした経験がないの。可哀そうと思って、受け取ってちょうだい」
 千香の言葉に、直ぐ反論した。
「そんなことはない。千香ちゃんにどれほど要求されたか、覚えていないの?」
 千香は平然と答える。
「私や子供たちは、あなたの義務でしょう」
 マルコスがふたりの口喧嘩に、クスクスと笑いながら千香の背中を優しく摩る。
「わ、分かったから、喧嘩しないで・・」
 亜紀がふたりの言い争いを止めさせた。
「いいのよ、亜紀! どうせ本を買うだけのお金があれば、満足なんだから。他に使う道がないの」
「じゃあ、素直に受け取るわ。ありがとう、輝君」
 輝明は、千香にムスッとしていたが、亜紀の言葉で機嫌が直る。
「待って、私もプレゼントするわ。だって、その服に合う靴かサンダルが必要よ。あっ、それにマルコスにも・・」
「僕にも、ですか?」
「ええ、私はあなたが好きだからね。記念にプレゼント。さあ、これから靴屋さんへ行きましょう」
 亜紀の服は、ほぼ直すことなく着られるが、袖口と丈を調整する。その間に、靴を選ぶことにした。亜紀はワンピースに合わせた白のサンダル。マルコスは流行りのスポーツ・シューズを手に入れ、千香に幾度もハグを繰り返す。
 しばらく軽食の店で休む。その時間を利用して、亜紀が身の回りの用品を買いに行く。
「マルコス。ちょっと聞くけど、亜紀は生活に困っていないの?」
「そう、オレも気になっていたんだ。マルコス、教えてくれるかい?」


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