ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

忘れ水 幾星霜  第四章 ⅩⅡ

「亜紀、紅茶はどうしたの? 冷めちゃうわよ」
 ふたりは我に返り、サッと離れる。
「い、今・・、できたから、ちょっと待ってね」
 輝明が、先に千香と自分のカップを運ぶ。亜紀は二回ほど深呼吸をしてから、知らぬ素振りで千香の横に座る。
「あら、亜紀の顔に涙の跡があるわ。輝坊ちゃん! 女性を泣かせたら、丁寧に拭いてあげるの。それが男性の役目なのよ」
《やはり、千香ちゃんにはオレの行動が見破られる。どうすることも、I can not だ》
「はい、仰せのとおりです。千香様、丁寧なご指導に感謝申し上げます」
「まだ、頭が高い」
 輝明がソファから下りて、土下座をする。
「分かれば、それで宜しい! おほほほ・・」
 三人はそれぞれの顔を見合わせて、大笑い。その後、紅茶の味をゆっくりと確かめながら飲んだ。
「あっ、そうだわ。マルコスを呼んで、家から着替えを持って来なければ・・」
「輝坊ちゃん、亜紀の服を買ってあげなさい。わざわざ家に帰る必要はないでしょう」
「そうだね、今から行こうか?」
「え~、いいわよ。なんなら自分で買うから・・」
「亜紀! 輝坊ちゃんが三十年分のプレゼントを買いたいと願っているの。断ったら、もう絶交よ。分かった?」
「ふふふ・・、分かったわ。近くのショッピング・センターへ行きましょうか?」
 今は体調が良いから、一緒に行きたいと千香がごねる。
《せっかくブラジルに来たんだ、少し観光気分を味わせてあげよう・・》
「じゃあ、一緒に行こう。無理しないでね・・」
「やった~、亜紀、輝坊ちゃん大好きよ」
 亜紀が、マルコスに連絡する。彼は近くの事務所にいたので、直ぐにやって来た。そして、四人でエルドラード・ショッピング・センターへ行く。そこは、六階建ての映画館や遊園地、地下にはレジが五十台以上並ぶハイパー・マーケットになっている。
「凄いショッピング・センターなのね。驚いたわ」
「本当だ、ここなら何でも揃うだろうね」
 目的の婦人服専門店を探す。千香はお気に入りのマルコスに支えられ、ゆっくりセンター内を歩く。マルコスは、休憩用のベンチがあると、千香の体を気遣い休ませた。千香は片時も彼の腕を離さず、嬉しそうに話し掛ける。
《久々だな、千香ちゃんのあんな笑顔を見るなんて・・。マルコスに感謝しなければ》
 千香が、ショー・ウインドー内のワンピースに目をやり、亜紀に知らせる。
「これどうかしら? あなたに良く似合いそう。輝坊ちゃんも見てごらんなさい」
「そうだね、亜紀さんらしいイメージだ」
《うん、でも・・、私には若すぎないかしら・・》
 亜紀は恥じらうように、その服を眺める。

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