ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅡ 

「あっ、あれは口からの出任せです」 「ほ、本当か? ワシは知らんぞ。あの豊満なメスの怖さ・・。あ~ぁ、おぞましいことが起こりそうだ」  ワシは鳥肌が立つ。この旅は、何故か鳥肌が立つことばかりだ。 「なんですか、マダムとの約束とは?」  ゴキジョージが不思議な顔で聞き、触角をピィーンとアンテナのように立てる。 「いや、ここへ来る前に出会った、横浜のマダム・イヤーネのことさ。渡航する船を教えてもらう…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅠ 

 ブリジョンソンのうんざりする長い挨拶が終わり、各大陸代表の報告発表が始まった。 「初めに、ユーラシア大陸代表の方は、こちらへどうぞ」  誰も壇上へ現れない。会場内がざわつき、ワシと黒ピカはキョロキョロと辺りを見渡した。 「お静かに願います。どうやら、ユーラシア大陸代表のイタリアのゴリジェラーノさんは、大会に参加できなかったようですね。それでは、アフリカ大陸代表のボツワナのゴキゴキさん、お願いし…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩ

「リーダー、残念ですね。船内で話をした仲間もいたでしょうね」 《ほう、もう冷静になっておる。うふふ・・、少しは成長したと思ってもいいのかな》 「そうだな、残念だが仕方ない。これが、無常の風よ」 「それは、なんの風ですか?」  ヤツは、次の疑問に心を惹かれ、目を輝かした。 「この世の命は、誕生と死滅の法則があり、それは永遠に変わらない。風が吹いて花を散らすように、無常の風がこの世に生きるもの、全て…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅨ

「でも、オイラは勉強をしたい。この旅で自分の知識が足りないことを知り、リーダーを目標に頑張りたいと思います」 「照れることを言うな! 旅はまだまだ続く、多くを感じて学ぶことが成長だ。それが、この旅の大切なお前の目的だよ」 「はい、リーダー。しっかり成長します」 《ワシは嬉しいぞ。一緒に旅をしながら、お前の成長を見て行けるとは・・》  サントス港は、リオ港から南へ四百キロ。海岸山脈が目の前に広がる…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅧ

 救命ボートに戻るが、隅でジッと動かない黒ピカ。心配するブリ―リアがヤツの体に優しく触れる。ヤツはブリ―リアを抱きしめるが、大きすぎてハグができない。代わりに彼女がハグをすると、黒ピカが押し潰された。その滑稽な様子に、他の仲間たちが冷やかす。黒ピカが、ようやく照れ笑いを見せた。  横浜を出港してから約一ヶ月、朝靄の静かなリオ・デ・ジャネイロ港に到着した。穏やかな海面を、数隻のタグボートに曳航され…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅦ

「大丈夫ですよ。あれらは体調が百十ミリで翅を広げると二百ミリになりますが、敵対心が無ければ友好的ですよ。あれらも人間を恐れています。ペットの食料用に捕獲されているので・・」 「ブリ―リアと同じだ! 可哀そうに・・。誰も信用できない目つきは当たり前だ。リーダー、そう思いませんか? オイラは必ず友達になって、安心してもらうよ」 《ため息が出るほど、お前の心は純真だなぁ。でも、心が成長しているのに、頭…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅥ

「人間どものペットで、ヘビやトカゲなどの爬虫類だってさ・・」  ブリカーノが説明する。すると、隣のゴキジョージが、にやにやしながら話す。 「だけど、俺たちの品評会を開き、艶の光沢具合や走る速さを自慢する愛好家の人間が、世界中にたくさんいるらしいよ」 「クックク・・」 「ムッフフ・・」 「いや、ワシらの仲間でシナなんとか・・の種族は、血行を促進する漢方薬に使われ、東アジアの人間どもに食べられている…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅤ 

「ん? 何が横に・・」  振り向くと、腰が抜けるほど驚く。なんとワシらより数倍大きい仲間がいた。黒ピカは、恐ろしさに固まって動けない。相手は、ワシらをジッと探る様子で見ている。  長い触角で、黒ピカに触れようか迷っている。ワシは、どうも女の子らしいと気付く。慣れないスペイン語で話し掛けてみた。 「オラー、セニョリータ!(こんにちは、お嬢さん)コモ エスタ?(いかがですか?)ヴィエロン エル ハポ…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅣ

 シャワー室から顔を見せたのは、黒ピカと友達になったハワイのゴキジョージであった。 「アローハ、ジャパニーズ・リーダー!」 「やあ、アローハ! ゴキジョージ、大丈夫でしたか?」 「はい、ハワイのメンバーはノウ プロブレム(問題ない)あなたのお陰です。マハロ(ありがとう)」 「いや、とんでもない。ところで、黒ピカを見ませんでしたか?」 「クロピーカ? ああ、キッチンにいましたよ」 《なにぃ、キッチ…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅢ

「それは、ハワイの仲間だ。アローハ(こんにちは)と挨拶して、英語で話せばいいのだ。まさか、英語がダメなのか?」 「話せませんよ。日本語だけです。オイラには、勉強する暇もなければできる頭も無い。リーダーは話せるのですか?」 「ああ、ワシの棲み処は中央公民館だった。英語教室や国際交流の集いがあり、知らぬ間に耳で覚えてしまった。ゴキ江や子供たちは、ペラペラだ。でもな、黒ピカよ。話せなくとも、友達になれ…