ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅢⅩⅡ 

「私と一緒に暮らすそうよ。これで、私も残りの生活を楽しく生きて行けるわ。ねえ、ブリ―リア! 共同生活する仲間を探しましょう」  ワシは、安心したら無性に食べたくなった。 「さあ、黒ピカ! たらふく食べるか?」 「はい、食べましょう、食べましょう」  二匹の大食い競争が始まった。 「おほほ・・、うふふ・・。面白いこと。ねえ、ブリ―リア、そう思わない?」 「ふふ・・。ええ、でも・・、彼と別れるのが辛…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅢⅩⅠ 

 マリアブリータの顔が、直ぐ目の前に見えた。ワシが横になっている。この状況はどうしたんだ。 「オ、オヤ・・ジ。・・。リーダー、オイラが分かりますか?」 「お、お前の顔だけは、絶対に忘れない」 「セニョール、しっかりしてください!」 「セニョーラ・マリアブリータ、少し休めば元気に・・。気が張っていたと思う。もう、平気だ」  大会は既に終わっていた。倉庫の外は朝を迎え、人間どもが忙しく動き回っている…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅢⅩ 

「ワシの話を聞いてくれ! ワシらの仲間には、危険を素早く感知する能力と、いかなる環境にも耐える体質が備わっている。それが三億年という長い時代を、生き延びてきた証明だ。これこそ、神から与えられた本能だ」 「だから、なんだって言うのだ。それは過去の話ではないか」 「そうよ、そうよ。過去の話だわ。現実を考えてみなさいよ」 「大昔には、殺虫剤スプレーなんて無なかった。憎き人間どもは、俺たちを殺すためなら…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅨ 

「どう思われますか? 過去の大会では、ここまで活発な意見はなかった。あなたの演説が、仲間の啓発を強く高めたようです」 「少し待ってくれ、講演の内容を冷静に考えていたんだが・・。どうも、仲間に夢を与えたのではなく、残念ながら幻想を与えたようだ。ワシら仲間にできるものは、何も無い。それが現実だ」  マリアブリータは、ワシの言葉を信じられない様子だった。 「そ、そんな! 私たちには、夢も希望も持てない…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅧ 

 彼女の言葉は、説得力のある言葉であった。黒ピカやゴキジョージは、黙って聞くしかない。 「でも、愛することは、好きを越えた次元の異なる普遍的な感情なの。男女の愛、家族の愛、子弟の愛など。私とセニョール・ゴキータの愛は、仲間の愛なのよ」 「ちょっと待って、なんなの、その普遍的な感情って? 格好いい言葉だけど、オイラにはぜんぜん意味が分かんないよ」 《なんと見事な真髄を極めている。それも的確な言葉。…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅦ

 休憩時間が過ぎ、分科会が始まる。各グループがまとめる内容を、ワシは楽しみに待った。その様子を眺めていると、ミスター・ブリジョンソンとセニョール・ゴキペドロが通訳を伴って、ワシの所へやって来た。 「世界本部から、リーダー・ゴキータに特別顧問をお願いする。なにとぞ、就任を受けて頂きたい」 「え~、ワシが、ですか? ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。ワシが特別顧問にですか?」 「イェス、是非とも承…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅥ 

「さて、どこまで話をしたか、忘れてしまった。直ぐに思い出すから・・」 「がんばれ~、だいじょうぶか~?」 「おれが代わりに話そうか? アッハハ・・」 「うふふ・・、私でもいいわよ」 「あっ、そうだ。神や仏の話だったな。信じる者は救われるか・・。まあ、いいや」  少し間をおき、ゆっくりと会場を見渡してから話し始めた。 「もし、人間どもが地球から逃げるのであれば、ワシらも考える必要がある。三億年の命…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅤ 

「いつの日か、人間どもによって、生き物の住めない地球にされてしまう。人間どもは宇宙開発と偽り、ヤツらだけが助かる、別の星を探しているらしい。このワシらの大切な地球を、助けるつもりはない! 捨てて逃げるつもりだ! 本当に卑怯なヤツラだ! 人間どもには頼る神や仏がいるが、ワシらには頼る神はいない!」  ワシは我を忘れ、興奮して怒鳴ってしまった。会場も大騒ぎだ。 「ジャパニーズ、あんたが我らの神だ!」…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅣ

 会場全体がシーンと静まり、ワシの言葉を待った。 「世界中から参加した皆さん! ワシらは三億年前の古生代石灰紀の地球上に誕生し、氷河期や隕石落下など多くの危機や試練を乗り越え、種族の命を受け継いできました。  森林環境に依存し平和に暮らして来たが、人間どもの出現によって、ワシらの生活環境が一変した」  通訳のために一息入れる。会場は、通訳の言葉に耳を傾けた。 「特に、この一世紀の間、人間どもの文…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅢ 

「え? チーズが嫌いなの? 面白い、うふふ・・。でも、セニョールもブラジル語が話せますね? どちらで・・」 「ワシは、単語を並べるだけです。棲み処がセントロ・コムニターリオ・クルツラール(中央公民館)という場所で、ポルトガル語の授業を聞いてました」 「それは、素敵ですね」  ワシは輪の中心にいる黒ピカを見詰める。 「いや、ワシの連れの黒ピカは、この旅で、色々な言葉を覚えてしまった。それも、アマゾ…