ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅧ

 救命ボートに戻るが、隅でジッと動かない黒ピカ。心配するブリ―リアがヤツの体に優しく触れる。ヤツはブリ―リアを抱きしめるが、大きすぎてハグができない。代わりに彼女がハグをすると、黒ピカが押し潰された。その滑稽な様子に、他の仲間たちが冷やかす。黒ピカが、ようやく照れ笑いを見せた。  横浜を出港してから約一ヶ月、朝靄の静かなリオ・デ・ジャネイロ港に到着した。穏やかな海面を、数隻のタグボートに曳航され…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅦ

「大丈夫ですよ。あれらは体調が百十ミリで翅を広げると二百ミリになりますが、敵対心が無ければ友好的ですよ。あれらも人間を恐れています。ペットの食料用に捕獲されているので・・」 「ブリ―リアと同じだ! 可哀そうに・・。誰も信用できない目つきは当たり前だ。リーダー、そう思いませんか? オイラは必ず友達になって、安心してもらうよ」 《ため息が出るほど、お前の心は純真だなぁ。でも、心が成長しているのに、頭…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅥ

「人間どものペットで、ヘビやトカゲなどの爬虫類だってさ・・」  ブリカーノが説明する。すると、隣のゴキジョージが、にやにやしながら話す。 「だけど、俺たちの品評会を開き、艶の光沢具合や走る速さを自慢する愛好家の人間が、世界中にたくさんいるらしいよ」 「クックク・・」 「ムッフフ・・」 「いや、ワシらの仲間でシナなんとか・・の種族は、血行を促進する漢方薬に使われ、東アジアの人間どもに食べられている…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅤ 

「ん? 何が横に・・」  振り向くと、腰が抜けるほど驚く。なんとワシらより数倍大きい仲間がいた。黒ピカは、恐ろしさに固まって動けない。相手は、ワシらをジッと探る様子で見ている。  長い触角で、黒ピカに触れようか迷っている。ワシは、どうも女の子らしいと気付く。慣れないスペイン語で話し掛けてみた。 「オラー、セニョリータ!(こんにちは、お嬢さん)コモ エスタ?(いかがですか?)ヴィエロン エル ハポ…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅣ

 シャワー室から顔を見せたのは、黒ピカと友達になったハワイのゴキジョージであった。 「アローハ、ジャパニーズ・リーダー!」 「やあ、アローハ! ゴキジョージ、大丈夫でしたか?」 「はい、ハワイのメンバーはノウ プロブレム(問題ない)あなたのお陰です。マハロ(ありがとう)」 「いや、とんでもない。ところで、黒ピカを見ませんでしたか?」 「クロピーカ? ああ、キッチンにいましたよ」 《なにぃ、キッチ…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅢ

「それは、ハワイの仲間だ。アローハ(こんにちは)と挨拶して、英語で話せばいいのだ。まさか、英語がダメなのか?」 「話せませんよ。日本語だけです。オイラには、勉強する暇もなければできる頭も無い。リーダーは話せるのですか?」 「ああ、ワシの棲み処は中央公民館だった。英語教室や国際交流の集いがあり、知らぬ間に耳で覚えてしまった。ゴキ江や子供たちは、ペラペラだ。でもな、黒ピカよ。話せなくとも、友達になれ…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅡ 

 揺れは、日毎に激しくなる。船が傾く方へヨロヨロと歩き、まるで酔っ払いのようだ。ワシはできる限り棲み処で静かにしていた。若い黒ピカは、片時も休まない。ところが、フラフラとヤツが戻ってきた。 「どうした、具合が悪いのか?」 「あ~、気持ちが悪くて、もう歩けない」  ワシの前でバッタリと倒れ、動かなくなった。 「それは、船酔いだ」 「お酒なんか、飲んでいませんよ。まだ、未成年ですから・・」 「当たり…

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅠ

「長い道のりだ。安全で快適な、仮の棲み処を探さなければ・・」 「リーダー。それよりも、先に何か、食べませんか?」 「そうだな、前の方からいい匂いがする。行ってみよう」  貨物船のためか、人間どもの姿が少ない。安心して行動ができる。キッチンは意外と広く、清潔であった。直ぐに残飯の在りかを探し当てた。ワシらは用心を怠り、食事に没頭する。 『バッシ、バッシ・・』  不意に叩かれた。 「黒ピカ、早く逃げ…

  嫌われしもの 遥かな旅 Ⅹ

 のらりくらりと言葉を交わすマダムの対応に、言い知れぬ怒りが湧く。もう、我慢ができないとワシは思った。 「とにかく・・、ですな!」  その瞬間、黒ピカがサッとワシの前に出る。豊満なマダムの体を軽くタッチした。 「お美しいマダム・イヤーネ、南米から帰国したら横浜に来ます。死ぬまでお仕え致しますから、是非、貨物船の場所を教えてください」 《えっ、なんだあ? お前の、この対応は? またまた鳥肌が立って…

  嫌われしもの 遥かな旅 Ⅸ

 ワシの真剣な表情から、失敗は許されないと理解した黒ピカは、翅をバタバタと動かし気を引き締める。ヨットがうねりの頂点に達した一瞬、岸壁を目がけて飛んだ。  ワシは体操選手のように触角を広げ、華麗なフォームでピッタと着地をする。黒ピカは風に煽られ、コロコロと転んでしまった。 「うっ、痛たた~。もう、痛いなあ~」 「おい、平気か?」 「ああ~ぁ、リーダーと同じに、格好良く決めたかった。残念だ」 「ケ…