ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

ア・ブルー・ティアーズ (蒼き雫)Ⅳ

 穏やかな元旦の朝を迎えた。全日本実業団駅伝の報道用ヘリコプターのプロペラが、澄みきった空気を切り裂き忙しなく飛んでいる。私は妻の八重子と初詣に高崎観音へ出かけた。ブラジルから帰国して二十五年になるが、高崎観音に毎年欠かさずに参詣している。時折、八重子が他の寺社へ誘うこともあるが、私は頑なに譲らない。  その訳は、父と最後に会話をした高崎駅のプラット・ホームにある。発車を知らせるけたたましいベル…

疑 ? ?

 これは小説ではありません。突然に疑問が湧き書きたくなった。これも?  この世の中は疑問だらけだ。暑ければ? 寒ければ? 雨が降らなければ? 降れば? 生きることも、死ぬことも? 疑問は不思議な感情だ。その感情を持つ人間は不思議な生き物だ。人間ってなんだ? 考える葦? 本当か? 信じられん。腹が空けば死ぬ? 食べ過ぎても死ぬ? 訳の分からぬことを言う?   タバコは間接的に命の危険だと言ってCM…

ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅲ 

 クリスマスのイルミネーションが町の至る場所に飾られ、彩りの風景が行き交う人々の心を楽しませる。病院でも各階のナース・センター前に、小さなツリーが置かれ患者の目を和ませた。  巡回の折、いつも気にかけている佐藤の様子をナース・センターの画面から眺めている。白く冷たい壁に囲まれ何もない天井を見つめる佐藤の姿。担当の看護師の話では、緊急入院の三日後にアルコールが抜けて穏やかな表情になったという。意識…

無題  Ⅴ

 半世紀前の記憶を辿るのは簡単ではなかった。それも六十数年のたった一年間だけだ。ジグソーパズル全体のイメージは浮かぶのに、肝心な幾つかのピースが脳裏のどこにも見当たらない。大切な記憶のピースを当て嵌めることができず、思い出は蝕まれおぼろげにしか現れなかった。  一町ほどの通りを北に歩きながら、あちらこちらの面影を突きはむ。時折、面影のピースがポロリと現れるが、当て嵌める箇所が思いつかない。オコち…

ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅱ

 白い雪に覆われた浅間山が陽に輝くほど良い天候であったが、澄んだ秋の空気に冬の冷気が流れ込む夕刻から、冷たい雨模様に変わった。雨は次第に強くなる。  夜十時過ぎに、救急隊から受け入れ要請の電話が入った。 「はい、F病院ですが」 「中央救急の狭山です。三十代の男性が側溝の中に転倒。呼びかけに反応が無い状態です。受け入れできますか?」  私は、当直の藤田先生に報告して受け入れの確認をとる。 「はい、…

ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅰ

 肌寒の雨模様の静かな夜。  市内の北部環状線に近い病院の待合ロビー。柱の時計が弱々しく九時を告げた。時間を持て余していた数人の患者が、ため息をつきながらゆっくりと病室に戻って行く。  事務所内にいた私は、パソコンの画面から目を離すとしばらく目を閉じた。両手で額を数回摩り、独り言を呟く。 「時計の電池を交換した方がよさそうだな・・。さて、見回りに行くかな」  息をフッと吐き、席を立った。  受付…

無題 Ⅰ

 人の記憶とは、不思議なものである。  消し去りたいと願う記憶はなかなか消えず、がむしゃらに振り返っても全く甦ることのない記憶もある。時として、爽やかな風がフッと脳裏を掠め、心を揺さぶる意地悪な記憶もある。  私の心肝に残る年少期の記憶が、生年六十五を過ぎた頃より日々霞みはじめた。老いた脳裏から散逸する前に、あの思い出を確かめたく故郷の高崎へ半世紀ぶりに訪れてしまった。  駅舎は近代的な駅ビルに…

無題 Ⅳ

 朝からそぼ降る雨の日。  敏ちゃんが本部へ行こうと迎えに来た。ふたりは傘も差さずに走って本部へ行く。本部には、全員が集まっていた。思い思いに何かをしている。貴ちゃんと浩ちゃんがオレ達を見て集まると、映画製作の話に夢中になった。  そのとき、敏ちゃんが急に不快そうに顔をしかめ、キョロキョロと辺りを見回す。その様子に、オレも異様な臭いに気付く。勇ちゃんが、突然に怒鳴った。 「スカンクは、誰だ!」 …

無題 Ⅲ

 カブスカウトの二泊三日の宿営キャンプで新潟の海へ行き、帰って来た翌日の朝。隣の家に住む幸雄ちゃんから本部に来るよう言われた。すぐに本部へ行くと、孝夫ちゃんがみんなのTシャツをめくって、肌の焼け具合を調べていた。 「輝ちゃんも見せて」  オレは、言われたとおりに背中を見せる。 「おっ! 輝ちゃんが一番焼けている。勇ちゃん、確認してよ」 「うん、こりゃあいいぞ。輝ちゃんに決めた」  みんなが拍手。…

無題 Ⅱ

「仕方ないな、続きは外でやろう」  勇ちゃんが困った顔で、孝夫ちゃんに言った。 「じゃあ、そうしよう。四人はこっちに来てくれ」  外はやぶ蚊だらけで大変だ。オレ達は渋々集まった。敏ちゃんが自分の頬を平手で叩く。オレも左手の甲を刺されたので、ボリボリと掻いた。ほかの皆も叩いたり掻いたりで忙しい。 「貴ちゃんの家に、八ミリカメラがあったよね? それ借りられるかな?」 「うん、大丈夫だと思う」 「じゃ…