微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅦ
守護や防人たちが洞窟観音を出ると、邪鬼たちが林の方へ逃げ始めた。駐車場の周囲が戦場となる。罵声と呻き声が錯綜。半時ほどで、邪鬼の屍が山積みになった。
「こちらへ・・」
徳明園の門まで許され、私たちは駐車場の周辺を見渡す。その光景は、目を覆うほどの荒ぶ世界であった。
「今から、あの屍を始末します」
一瞬、空が紫色に包まれ、駐車場に闇の穴が開く。
「あれは、・・・」
私の質問に、御堂が答えた。
「はい、冥府へ通じる穴ですが、あの穴は邪鬼の屍だけを処分するものです」
まだ呻く邪鬼もいたが、防人の槍に絶える。大量の屍が放り込まれた。女子たちは、余りの情景に、体を震わせ言葉を飲み込む。
「あれ、権助の姿が見えない・・」
「いいえ、彼は守護によって、取り押さえられているわ」
不安な私の問いに、千代が知らせてくれた。しばらくして、闇の穴が封印される。
「これから、権助を処分するので、後ろに引きさがって下さい」
御堂が指示する。私たちは、門柱の近くに寄った。
「権助の声に耳を塞ぎ、目を決して会わせないこと。特に、若月さん。よろしいこと・・」
若月が大きく頷き返す。
「グァ~、お前ら、俺は絶対に許さん。覚えておけぇ~」
林の中から、囚われた権助が現れた。体中が血だらけ、抵抗の跡が見える。権助は屈強の守護に囲まれ、洞窟観音の奥へ連れて行かれた。
「えっ、どうして洞窟観音のへ・・」
若月が疑問を唱え、私も不思議に思った。
「確かに姿は邪鬼ですが、怨霊に支配された私の仲間です。内室も心を痛めており、再度処罰を考えるそうです」
千代が悲痛な声で、私にささめいた。