ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅥ 

 二人の美しさに、助手たちが危険な現状を忘れ、見惚れてしまった。
「あらあら、しっかりしてちょうだい。危険が迫っているわ」
 御堂が、たしなめる。
「そうだよ、これからが本番だ。気を引き締めていかないと・・」
 若月も声を掛ける。
「それで、この後は何をすれば良いのですか?」
 私が、千代に尋ねた。
「今から、守護や防人たちが、出てまいります。ただし、決して話し掛けないで下さい」
「え、何故ですか?」
「はい、彼らは私たちと異なり、この世に存在しない霊です。話し掛けると、大変なことが起きてしまう」
 千代の説明によれば、現世の人間が話し掛けると、存在しない体の魂が抜かれ、悪霊が宿ってしまう。この現状であれば、権助の仲間が魂の抜け殻を奪うことである。
「なるほど、それは恐ろしいことだ」
 その話を福沢准教授に説明し、助手たちに必ず守るよう伝えた。全員が納得する。
「さあ、目を閉じてね。合図したら開けていいわ」
 観音像の後ろから、眩しい光が発散した。その場の全員が目を閉じる。同時に、入り口方向で邪鬼の唸り声が聞こえてきた。
「はい、目を開けていいわ」
 千代の声で、目を開ける。なんと、そこには逞しい守護や防人たちが並んでいた。
「冥府の勇者たちよ! 忌まわしき邪鬼を懲らしめ、冥府の闇に葬りなさい!」
 御堂が、透き通る声で告げる。
「おう! 畏まりました」
 地の底から湧くような声。私たちは岩壁に沿って並び、不思議な光景を無言で眺めていた。信じられないことが、現実に起きている。決して幻覚ではない。
 甲冑姿の守護や防人が、整列して洞窟の外へ向かう。
「治まるまで、この場から動かないで下さい。絶対に、よろしいですね」
 千代が厳格に伝える。私と福沢は、互いに目を合わせ頷いた。

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