ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅣ

 邪鬼の姿が見える私と若月が、揺れる木々の周辺を凝視する。
「やはり、隠れているな。ただ、権助の姿が無い」
「いえ、あの大木の後ろにいますよ。主任・・」
「そうか、指で示すなよ。ヤツは、こっちが気付いていないと思っているようだ」
 残念なことに、渡瀬と明菜が若月の言葉を聞いて、大木の方を眺め助手たちに知らせてしまった。彼らは、方向を指しながら騒いだ。
「ダメだ。見るんじゃない! 早く中に入れ!」
 私が怒鳴った。
「主任、ヤツらが狂態な動きで、こちらに向かってきます」
 牙を露骨に見せ、ゾロゾロと林の中から出て来た。
「これは、不味い・・。若月君、みんなに沈香の粉を振りかけろ」
 咄嗟に沈香の粉を、助手たちに振り掛ける若月。さらに、福沢がご朱印の守り袋を、彼らの首にぶら下げた。
「え~、邪鬼が見えた!」
「ええ、私も見えるわ。いやぁ~、何よこれ、気味が悪い」
 思い掛けない効果に、私も驚いた。
「ヨシ。結果オ~ライだ!」
 福沢が半信半疑で試した効果が、寸前で活用できた。彼が私に目配せする。
「後で、説明しますよ」
 私は頷いた。
「さあ、早く、早く中に入れ! ギリギリで豚の内臓を投げろ!」
 最後尾の福沢と助手の畠山が、内臓の袋を用意した。
「キサマら~、待たんか~、ガァ~・・」
 権助が現れた。以前より体形が大きく、他の邪鬼が小さく見える。
「よし、畠山。投げるぞ!」
「はい、先生・・」
 二人が同時に内臓を投げた。直ぐに、先頭の邪鬼が飛びつく。バリバリ、ムシャムシャと食べる。他の邪鬼も負けずに奪い合う。駐車場が瞬時に修羅場と化した。

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