ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅢ 

 関越高速道の高崎インターを下り、市内へ向かう。環状線から、国道17号の烏川沿いを走る。聖石橋を渡り、目の前の観音山を目指した。
「さあ、直ぐ近くだ。心構えはいいかな」
 福沢が、助手たちに告げた。彼らは前方に目を向け、ただ頷く。車内が緊張感に包まれる。
「そ、そんなにぃ、固くなったら~、素早く、う、動けないよ。リラックス、リラックス・・」
 上っ調子の声で、若月が緊張を和らげようとした。
「ふふ・・、若月さんこそ・・、うふふ・・」
 助手の明菜が笑ったので、他のメンバーも笑った。おかげで緊張感が薄れる。
「そうだ、その調子で行けば、大丈夫だ!」
 木漏れ日の坂道を走る。しばらくして、左側に徳明園の標識が見えた。
「到着だ。直ぐに車から降りないで、付近の様子をチェックする。いいね」
 徳明園の入り口近くに、車を駐車させる。幸いにも、平日の昼時間なので、他の車は一台も停まっていなかった。
「最初に福沢先生と私が、入場券とご朱印の札を購入してくる。それまで、待機だ。若月は、彼らが見えるから、周囲を確認して欲しい」
「はい、分かりました」
「えっ、若月さんは、邪鬼の姿が見えるのですか?」
 明菜が、若月の顔をまじまじと見つめる。
「いや~、自慢することじゃないが、見えるんだ。だから、僕が狙われているんだよ」
「ほ、本当なんですね? 先生から説明されたけど、恐れ入った」
 リーダーの畠山が感心する。他のメンバーからも直視され、若月が顔を赤らめた。
「でもね、これから会う千代さんと御堂さんは、あの世の人とは思えない美人なんだ。とても驚くよ」
「何が、驚くんだい?」
 戻って来た私に聞かれ、若月が慌てる。
「あっ、主任。いや、千代さんと御堂さんのことを・・」
 全員に、入場券とご朱印の札が配られた。周囲を窺いながら、車から降りる。その時、私らの行動を妨げようと、駐車場周辺の木々がザワザワと揺れた。

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