微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅡ
「オ、オ~ッ!」
慌てる若月。ハンドルをしっかり握る。
「ガガッ、ウフフ・・、ガァー、フフフ・・」
スピーカーから雑音と共に、薄ら寒い笑いが響く。顔を青ざめる若月に、私が肩を軽く叩き落ち着かせる。
「オイ、そこの、若いの~。必ず~、お前を~、食い殺すからな~」
地獄の底から、あの権助が話し掛けた。
「うるさい! お前なんかに殺されるか!」
咄嗟に反発した若月。私は、不味いと思った。
「やはり~、聞こえていたんだぁ~。ウフフ・・」
案の定、ヤツの計略に嵌った。
「ク、クッソー。だから、なんだー!」
血気に逸る若月。
「向こうの思うつぼだ。気持ちを抑えろ」
私は静かに諭す。
「すみません。つい、動転して・・」
「分かっているよ。やっぱり、一緒に来て良かった」
「そうか、晋介もいるのか。フフフ・・」
権助が、私に気付く。
「ああ、いるよ。執念深いヤツだ、お前は・・」
「何を、ごちゃごちゃと・・。お前も一緒に切り裂いてやる。待っていろよ」
私は、カバンから清めた赤札を取り出し、スピーカーに貼った。
「ガ、ガー、ムム・・。ガァー、オオ・・」
スピーカーの雑音が途切れる。
「ふぅ~、疲れた」
憔悴した若月が、ため息を漏らす。
「これから、どんな方法で攻めて来るか分からん。だから、常に用心を怠るな」
「はい、主任・・」