ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅡ

「オ、オ~ッ!」
 慌てる若月。ハンドルをしっかり握る。
「ガガッ、ウフフ・・、ガァー、フフフ・・」
 スピーカーから雑音と共に、薄ら寒い笑いが響く。顔を青ざめる若月に、私が肩を軽く叩き落ち着かせる。
「オイ、そこの、若いの~。必ず~、お前を~、食い殺すからな~」
 地獄の底から、あの権助が話し掛けた。
「うるさい! お前なんかに殺されるか!」
 咄嗟に反発した若月。私は、不味いと思った。
「やはり~、聞こえていたんだぁ~。ウフフ・・」
 案の定、ヤツの計略に嵌った。
「ク、クッソー。だから、なんだー!」
 血気に逸る若月。
「向こうの思うつぼだ。気持ちを抑えろ」
 私は静かに諭す。
「すみません。つい、動転して・・」
「分かっているよ。やっぱり、一緒に来て良かった」
「そうか、晋介もいるのか。フフフ・・」
 権助が、私に気付く。
「ああ、いるよ。執念深いヤツだ、お前は・・」
「何を、ごちゃごちゃと・・。お前も一緒に切り裂いてやる。待っていろよ」
 私は、カバンから清めた赤札を取り出し、スピーカーに貼った。
「ガ、ガー、ムム・・。ガァー、オオ・・」
 スピーカーの雑音が途切れる。
「ふぅ~、疲れた」
 憔悴した若月が、ため息を漏らす。
「これから、どんな方法で攻めて来るか分からん。だから、常に用心を怠るな」
「はい、主任・・」

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