微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅱ
私は仕事しながらも、若月のことが気になる。
昼前に、若月がやって来た。
「ちょっと、待っていろよ。直ぐ終わるから・・」
「あっ、ハイ」
一旦、仕事を切り上げ、廊下で待つ若月に声を掛けた。
「さて、昼飯に行くか? 今日は少し肌寒いから、ちゃんぽんでも食べよう・・」
傘を差し、近くの店へ行く。幸いに混雑しておらず、待つことなく座れた。
「それで、どんな声だった?」
「ええ、子供の声でした」
「男の子か、女の子か、どっちだ?」
「ん~、・・・」
若月は、その場面を思い出し、考え込んだ。
「じゃ、どこから聞こえたんだ?」
「実は、車のスピーカーでした。それも、スイッチが切れている状況で、声が流れて来たんですよ」
思い出す若月が、武者震い。
「スイッチが入っていなかった?」
「ええ、咄嗟に車線変更し、車を停めましたよ。ラジオを確認したけど、やはりオフでした」
ちゃんぽんが運ばれて来たので、先に食べることにした。食べながら、互いに脳を働かせる。私は、一口食べては考えた。
「あ~、思い出しました。確かに、女の子の声でした」
「年頃は・・?」
若月は、ちゃんぽんを頬張り、考える仕草。口を動かし、眉を寄せる。
「何か、分かることを喋ったのか?」
グラスの水で胃の中に流し込む。
「お願い、助けて・・、そのように聞こえました」
オフ状態のスピーカーから、子供の声。妙なことになったものだ。