ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅰ 

 最近は温暖化の所為か、極暑が続く。今年は、梅雨時期が極めて少なかった。長雨は嫌だが、情感を味わう淑やかに降る小雨、身勝手ながら恋しく思う。
 そんな私の想いを応えるかのように、朝から雨が降り始めた。現実に降ると、気分が優れない。特に出勤時は、足元まで濡れて仕事に差し障る。出社すると靴を脱ぎ、用意した靴下に履き替えた。
「大河内主任、おはようございます」
 相変わらず、元気な声で挨拶する若月。
「やあ、おはよう」
「久しぶりの雨は、頗る気持ちがいいですね」
 私は彼の足下を見てしまった。
「あれ、若月の足は濡れていないね」
「ああ、はい、今日は車で来ましたから・・」
「そうか・・」
 私は心の中で呟く。今の若いヤツは、苦労もしないで・・。
「ところで、大河内主任・・」
 急に浮かぬ顔になった。
「どうした、困ったことでも起きたか?」
 私に近寄り、小声で話し掛ける。
「ええ、実は声が聞こえたんです」
 彼の表情から、直ぐに察した。互いに感じる別世界、社内では二人の秘密である。
「ハーイ、集まって下さい」
 その時、女子事務員が朝礼を呼び掛けた。
「分かった。後で昼飯の時に聞こう」
 朝礼後、二人は其々の仕事に勤しむ。

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