偽りの恋 ⅧⅩⅦ
彼女の感情は、激しく変化する。言葉を選ばなくてはと思った。ただ、恣意なことは避けたい。
「う~ん、上辺だけの女性らしさでなく。なんと言えばいいのかな。麗しい? 簡単に言えば、仕草や姿が大人の女性として、たおやかな色っぽさかな?」
千恵は、直ぐに解釈したようだ。あっ、やっぱり。あの目つきは、小悪魔の目だ。勘違いしている。
「な~んだ。そうか、金ちゃんが喜ぶ体形になり、もっと女っぽくなればいいのね」
「ち、違うよ。淑やかな女性だよ。色気は自然に醸し出される上品な女性だ」
瞬時に目付きが、悪魔の権化に変わった。
「じゃ、私は下品なの? はしたない女だと思っているのね?」
「そ、そ、そうじゃないよ。千恵ちゃんは、素敵な女の子だよ。俺が悪かった、ごめん、誤るよ」
俺は手を合わせ、低姿勢になる。
「素敵な女の子から素晴らしい女性になると、勝手に想像した。そんな千恵ちゃんを、将来の妻として愛したかった」
「・・・」
「偽りでなく、本当の恋を君としたいんだ。そして、恋から脱却して、永遠の愛に結び付けたい。それが、俺の本心だよ」
俺は必死に言い訳をする。惨めだが、千恵を失いたくなかった。
「お願いだ。信じて欲しい・・」
平手でパッチンと頭を叩かれた。
「えっ、なんで?」
俺は驚き、姿勢を戻す。
目の前に、涙でぐしゃぐしゃの千恵が、俺を睨んでいた。愛しさに胸が疼く。俺の心は完全に恋の虜と化し、体が熱中症同然の暑さに。
「金ちゃんのバカ・・。分かった、分かったから・・。私を抱いて」
俺は言葉を返さず、そのまま千恵を抱きしめる。千恵の唇を久しぶりに味わう。
「千恵ちゃん・・、悪かったね」
唇を離し、俺は詫びた。彼女は俺の言葉を、唇で塞ぐ。長いキスが続く。