ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅧⅩⅤ 

「あいや~、間違えた。性欲じゃなく、快楽だった。だから、そんな気持で、恋を始めたら大変だ」
 俺は支離滅裂な状況に陥った。千恵は面白そうに聞いている。
「だから、なんなの? うっふ・・、金ちゃんを困らせるって、楽しい。ふふ・・」
「うー、参った」
 あの時の、千恵の姿を思い出してしまった。頭に焼き付いたイメージを、懸命に拭い去る。あ~、汗だくだ。
「金ちゃん、安心してよ。確かに、あの時は無我夢中だったわ。でも、弥彦の連中と同じことを、私がやっていると気付いたの」
 千恵が笑いを止めて、真剣な眼差しで俺を見る。
「弥彦の連中?」
「そうよ。恋じゃなく、遊べる仲間を強引に勧誘するの。断れば、酷い仕返しが待っていたわ。その所為で、幾人もの女子高生が泣いた。私は嫌で、逃げて隠れたわ。でも、毎日のように待ち伏せし、私を狙っていたの」
「え~、それは怖かったろう。捕まらなかったのかい?」
「ええ、もう少しで裸にされ、危なかった。祖母ちゃんが学校と駐在所に通報して、助けてもらったの」
 思い出して、身を縮める仕草。
「そうか、これで佐藤さんの説明が理解できた」
「え、何を説明したの?」
「お祖母ちゃんが、千恵ちゃんを遠い神奈川へ寄越した理由さ」
「ああ、嫌な思いでね。そうよ、弥彦に戻って住むなんて、ぜんぜん無いわ」
 その言葉に、千恵の視線が訴える。俺はドキッとした。
「だから、早く素敵な人に巡り合い、恋をしたかったの。そして、結婚する」
 強烈な眼差しが、俺の脳を釘付けにする。俺の思考は固定された。
「その素敵な人が、金ちゃんなの。Did you get!」
 なぬ? 英語か?
「Yes,I’ve got it」
 これでいいのかな? まあ、いいや。
「じゃ、素敵な恋をしましょう。ねっ、金ちゃん・・」

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