偽りの恋 ⅧⅩ
俺は驚き、目を見張る。
「そうなの。お祖母ちゃんから、いろんな国の話を聞かされたわ。だから、小さい頃からの夢だった」
「お祖母ちゃんが、何故?」
千恵の説明によると、祖母も外国の生活に憧れていたという。実際に、祖父と一緒にヨーロッパや北中米へ観光旅行した。
「だから、外国に住めたらいいねって、いつも話していたの」
俺の考えが、さらに前向きになった。
「じゃ、千恵ちゃんは外国に住むこと、問題無いんだ」
「うん、ぜんぜん問題無いよ」
「そうか・・」
千恵は目を輝かせ、俺の言葉を待つ。俺の胸が高鳴る。
「千恵ちゃん、俺と外国で住むかい?」
「うっそ、それ本当なの?」
両手で口を塞ぎ、驚きの声をあげた。
「ああ、本当だ」
「信じられない! それって、プロポーズなの?」
「ん~、プロポーズらしくないけど・・」
千恵が、思いっきり抱きついてきた。
「やっぱり、金ちゃんは・・。あっ、わ~ぁ」
「お~、危な~い」
二人して、ベンチから転げ落ちそうになる。立ち上げり、しがみつく千恵を抱きしめた。
「ねえ、金ちゃん。私、いつも金ちゃんの夢を見ていた。結婚する夢を・・」
俺の胸に囁く。その囁きは、俺の心底を揺るがす。
「千恵ちゃん・・。ただ、約束して欲しい」
惑乱する心を落ち着かせ、先の考えを話すことにした。
「・・・」
彼女は体を微動だせず、黙って聞く。
「まだ、結婚は考えられない」
その言葉に、急ぎ俺の胸から体を引き離す。そして、いじらしく見つめる。
「えっ、なんなの? 意味が分からない・・」