偽りの恋 ⅦⅩⅨ
「千恵ちゃん、俺は正直に話すから、良く考えてね」
彼女の体が不安で固まる。
「そんなに、緊張する必要はないよ」
肩を軽く摩る。
「うん、分かった・・」
「人を好きになること、決して悪いことじゃない。俺はたくさんの人を好きになった。残念だけど、嫌う人もいたし、嫌われもした」
何を説明しようと、しているんだ。千恵も、首を傾げ理解に苦労している様子だ。
「あっ、ごめんな。何を話すか、忘れちゃった・・」
一瞬、キョトンと俺の顔を見る。が、直ぐに笑い出した。
「うふふ・・、金ちゃんって、理解できない。アハハ・・」
「あはは・・、そうだね。自分でも理解できないよ。はは・・」
俺が千恵の鼻を指で弾く。すると、目を丸くし唖然とする。
「千恵ちゃんの癖を、俺が代わりにしてあげた」
「えっ? 癖?」
「なんだ、自分の癖を知らなかったのか?」
彼女は首を振る。そして、自分の鼻を触った。
「ふふ・・、その癖は嫌いじゃないよ。とても可愛くて好きだな」
顔を赤く染め、項垂れる。
「その癖が、俺の心を打ち砕いたのさ」
「うっそ~、本当なの?」
「ああ、本当だ・・」
こんどは、自分の指で弾く。
「さて、これからはマジで話すよ」
千恵の手を握り、自分が考えていることを、伝える。
「俺の夢は、単なる旅行ではなく、外国生活だった」
「外国生活? わ~ぁ、私と同じだ」
「えっ、同じ夢?」