偽りの恋 ⅦⅩⅥ
俺の考え方は一方的なのかもしれない。この先、どんな障壁が待ち構えているか、想像もつかない。でもな、一番の問題は恋愛だろう。
「ねえ、金ちゃん。あの子の行動を、どう思ったの?」
「うん、積極的だった。本音で言えば、体で誘うことが恋愛と思っているように感じた」
これが現代風の恋愛なのであろう。いじらしい恋。淡い恋。密やかな恋。俺の考えが古風なのかもしれない。
「千恵ちゃんは、本当の恋心を知らないの。どうすれば、好きな人になれ、どうすれば、認めてもらえるのか、不安で苦しんでいるわ」
「ん・・」
恋の解釈は、本当に難しいと思う。ただ単に好きなら、心がときめくも他で紛らすことが可能だ。だが、真の恋心は苦悩に泣き崩れ、安易に触れることも叶わない。
「それに、彼女は後悔している。金ちゃんに対し、積極的な態度や恥ずかしい姿を見せてしまったこと・・」
「確かに、最初は驚いたさ。でも、それは今風で当たり前のことだと、俺は感じた」
佐藤が、マジに俺を見つめる。彼女の瞳に愁いが浮かぶ。
「残念ね。彼女は今風な女の子じゃないわ。弥彦のお祖母ちゃんの手で育てられた子よ。だから、彼女なりの恋心を、誤った表現で行動したの。そして、結果的に金ちゃんから見限られた。そう思っているわ。部屋に閉じこもり、仕事も休んでいる」
俺はショックだった。千恵が、そこまで俺を思い詰めている。
「え~、それは本当かい? 佐藤さん・・、俺は見限っていないよ。ただ、困惑していたんだ。俺のイメージは、活発な現代風の子だと思っていた。だけど、あのお祖母ちゃんに会ってから、ずーっと考えていた」
佐藤は俺の話しを、黙って聞いてくれた。
「それに、弥彦のお守りや優しい言葉が、千恵ちゃんを気遣っていた。だから、俺の心底に彼女の存在が根付き始めてしまった」
「・・・」
「これは、偽りの恋じゃない。本当の恋が芽生えたのかと、悩んでいる」