偽りの恋 ⅩⅠ
レストランを出る。ぶらりと散策した。
「金ちゃん、あの洋風のお城は、何?」
「あ~、あれか。喫茶店だよ」
二年前に、入ったことがある。
「私、入ってみたい。行こうよ・・」
俺は迷った。
「行こうよ、ね?」
腕を掴まれ、仕方なく歩く。目の前に着いた。
「さあ、さあ、入ろう・・」
ほとんど、強引に引っ張られる。
中に入る。一階の奥に向かうつもりが、佐藤が二階の階段を上り始めた。
「佐藤さん、こっちじゃないよ」
階段横に、上は同伴喫茶と書かれてある。
「え、何んでダメなの?」
「ほら、ここに書いてあるよ。二階以上は、同伴喫茶になっている」
「あら、本当だ。でも、いいじゃん。上に行こう」
佐藤は俺の手を握り、離さない。思い出の一般席でなくて、良かったかもしれない。俺は階段を上がる。
「全然、雰囲気が違うのね」
確かに、席は一方向に並び、カーテンで仕切られたいる。俺は一瞬困惑した。
「金ちゃん、ここに座ろう」
「あ~ぁ、分かった」
ウエーターが、注文を聞きに来た。
「アイスコーヒーを二つ・・」
「はい、かしこまりました」
二人は落ち着かない雰囲気になった。
「金ちゃんは、初めてなの?」
「俺かい、いや初めてじゃないよ」
俺はうそぶく。
「やっぱりね・・」
「何が、やっぱりなんだ?」
「だって、そんな感じがするもの」
急に、俺の遊び心がときめく。