ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅦ 

 牧師のオヤジさんから問われるまま、ふたりは素直に答えた。
「それでは、指輪の交換をして下さい」
 俺は一瞬固まる。
《しまった。指輪を用意していなかった。え~、どうしよう》
「トーマスオジサン、リング プリーズ!」
「オッケイ メッチェン」
 後ろに控えていたトマース小父さんが、小箱を取り出した。
「ごめん、真美・・」
「いいのよ、洸輝。私がトーマス小父さんに頼んでおいたから、安心して・・」
 俺に渡された真美の指輪は、彼女の母親の形見であった。そして、真美が持つ俺の指輪は、真美がトーマス小父さんに依頼して作らせていた。
 二人は、交互の薬指に指輪をはめる。最後に、祝福されながらキッスを交わした。
「これで、晴れて夫婦だよ。おめでとう・・。アーメン」
 牧師のオヤジさんが、ふたりの頭の上に十字を示した。明恵母さんとトーマス小父さんが交互にハグする。
「コウキ、オメデトウ ゴザイマス」
「ありがとう、トーマス小父さん」
 儀式を終えた一行は、ショッピング・センターへ行き衣装を戻す。昼食はセンター内のレストランで食べることになった。
 全員が限界に近かったので、急ぎ注文する。
「腹が減って、もう死にそうだった」
「洸輝は、大袈裟ね。朝食を三人前も食べていたのよ、お母さん・・」
「そうそう、見たわ。大食いで、とても驚いたわ」
「あ~、明恵母さんまで・・」
 食事は、賑やかな雰囲気で食べた。やはり、トーマス小父さんも食欲全開状態。
「真美! ほら、小父さんだって凄い食べ方だよ」
「ふふ・・、本当ね。でも、彼はたくさん仕事をしたでしょう。だから、いいのよ」
 明恵母さんも、その様子に笑いを堪えることができない。
「おほほ・・、うふふ・・、驚いたわ」
「ダ~リンは、何もしないで食べるから・・。少し控えめにね」
「いや、俺は食べる。無理しても食べるぞ。はい、追加注文!」
「よし、私も追加注文だ」
 オヤジさんが、俺を追い駆ける。
「あら、まあ、呆れたわ」
 明恵母さんと真美が、驚く展開になった。トーマス小父さんがウインク。

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