謂れ無き存在 ⅦⅩⅦ
牧師のオヤジさんから問われるまま、ふたりは素直に答えた。
「それでは、指輪の交換をして下さい」
俺は一瞬固まる。
《しまった。指輪を用意していなかった。え~、どうしよう》
「トーマスオジサン、リング プリーズ!」
「オッケイ メッチェン」
後ろに控えていたトマース小父さんが、小箱を取り出した。
「ごめん、真美・・」
「いいのよ、洸輝。私がトーマス小父さんに頼んでおいたから、安心して・・」
俺に渡された真美の指輪は、彼女の母親の形見であった。そして、真美が持つ俺の指輪は、真美がトーマス小父さんに依頼して作らせていた。
二人は、交互の薬指に指輪をはめる。最後に、祝福されながらキッスを交わした。
「これで、晴れて夫婦だよ。おめでとう・・。アーメン」
牧師のオヤジさんが、ふたりの頭の上に十字を示した。明恵母さんとトーマス小父さんが交互にハグする。
「コウキ、オメデトウ ゴザイマス」
「ありがとう、トーマス小父さん」
儀式を終えた一行は、ショッピング・センターへ行き衣装を戻す。昼食はセンター内のレストランで食べることになった。
全員が限界に近かったので、急ぎ注文する。
「腹が減って、もう死にそうだった」
「洸輝は、大袈裟ね。朝食を三人前も食べていたのよ、お母さん・・」
「そうそう、見たわ。大食いで、とても驚いたわ」
「あ~、明恵母さんまで・・」
食事は、賑やかな雰囲気で食べた。やはり、トーマス小父さんも食欲全開状態。
「真美! ほら、小父さんだって凄い食べ方だよ」
「ふふ・・、本当ね。でも、彼はたくさん仕事をしたでしょう。だから、いいのよ」
明恵母さんも、その様子に笑いを堪えることができない。
「おほほ・・、うふふ・・、驚いたわ」
「ダ~リンは、何もしないで食べるから・・。少し控えめにね」
「いや、俺は食べる。無理しても食べるぞ。はい、追加注文!」
「よし、私も追加注文だ」
オヤジさんが、俺を追い駆ける。
「あら、まあ、呆れたわ」
明恵母さんと真美が、驚く展開になった。トーマス小父さんがウインク。