ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅢ 

 トーマス小父さんの案内で、センターの中を歩く。日本と余り変わらない風景だ。真美が、落ち着かない俺を心配している。俺の手をしっかり握り、離さないでいた。
「さあ、ここよ」
 目の前のお店は、レンタル・ショップであった。
「トーマス小父さんに頼んでいたの」
「えっ、何を?」
 真美と明恵母さんが目を合わせ、笑顔で頷く。トーマス小父さんと店員が、俺たちの方へ目を向けながら話している。店員がニコリと微笑み、俺と真美を呼んだ。
「洸輝、行きましょう」
 俺は彼女の後に従う。別室に入ると、俺は目を見張るほど驚いた。
「どうかしら?」
 なんと、そこには純白のウエディングドレスと白のスーツが、飾られていた。
「え~、これは・・」
 俺は、続く言葉が出ない。
「早く着替えて、ダ~リン!」
「う、うん・・。でも、俺に似合うかな? それにサイズは?」
「心配ないわ。私が、先にサイズを知らせているから、合うはずよ」
 真美の手際には恐れ入った。
「私は時間が掛かるから、洸輝、先に着替えて待っていてね」
 俺は頷いたが、まだ信じられない。普通のスーツさえ着たことがない。俺は、店員の指示に従い、試着室で着替えた。
 真美は、明恵母さんを呼び、着替えを手伝ってもらう。明恵母さんは、満面に笑顔が絶えず大喜びだ。
「洸輝君、私だけど」
 オヤジさんが、試着室に顔を出した。
「おっ、いいじゃないか。似合うよ」
「そうですか? 照れ臭いですね」
 姿見に映る自分に照れる。
《本当に、これは現実なんだろうか・・》
 試着室から出ると、トーマス小父さんが待っていた。
「オ~、ザッツ グレート ワンダフル!」
「えっ、何?」
「ああ、最高だってさ」
 トーマス小父さんの言葉が理解できなかった俺に、オヤジさんが教えてくれた。
「オウ、センキュウ! トーマス アンクル」

×

非ログインユーザーとして返信する