ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅡ 

「この街は、デトロイトに近いでしょう。だから、デトロイトの工場地帯へ機材を運ぶ貨物車が通るの。この街だって、ケロッグの工場があるわ」
「なるほど、デトロイトは自動車産業で有名だよな」
 オヤジさんが納得して、頷く。
「ケロッグと言えば、高崎にも工場が有るよね。施設の朝食で、良く食べさせられたな」
「そう、そう、確かにそうだ。高崎の姉妹都市もこの縁でなったらしい」
「ええ、私も知っているわ。夏休みになると、両方の町の高校生が互いにホームスティするの。私の友達も行ったわ」
「真美は、しなかったのかい?」
「だって、行けたとしても、受け入れができる家庭じゃなかったから・・」
 俺は真美の言葉を理解して、つまらない質問したと後悔する。
「ごめん、真美!」
「いいの。それに、ひきこもり状態の私には無理よ」
 テーブルの下で真美の手を握り、こっそり慰めた。
 九時半過ぎに、トーマス小父さんの車がホテルに迎えに来た。荷物が無いので車内はゆったり。出発する前に、真美と打ち合わせをする。
「ママのお墓に行く前、ひとつ寄る所があるの」
「どこへ寄るの?」
 明恵母さんが、真美に尋ねた。
「内緒だけど、お母さんには教えるわ」
 真美が、耳元で囁く。明恵母さんは、目を見開き驚いたようだ。俺とオヤジさんは、黙って見るしかなかった。
「どうして、教えてくれないのさ」
 俺が、不満な顔をする。
「行けば、分かるわよ。ねえ、お母さん!」
「ええ、そうね。喜ぶと思うわ。ふふ・・」
「さあ、トーマス小父さん。行きましょう」
 ユニークな車は、街の郊外へ出た。のんびりした風景だ。
《英語が得意なら、こんな街に住みたいな・・》
「じゃ、しっかり英語を勉強したら。でも、洸輝には語学のセンスがないから、無理かもしれないわ」
 その言葉に、反論できなかった。
「そうだね。日本の方が俺には合っているかも・・」
 ショッピング・センターが見えて来た。
「洸輝、お父さん、着いたわよ」

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