ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅥ 

 こぢんまりしたロビー。二十人程度が座れる広さだった。一緒に降りた人たちは、地元の住人と思われる。迎えや駐車場の自家用車に乗って、姿を消してしまった。
「車が来たわよ。さあ、行きましょう」
 外には、十人ほどが乗れるカーゴ車が待っていた。まるでクロネコ・ヤマト宅急便の車に似ている。
「ホ~ゥ、これか。こりゃぁ、荷物を載せてもゆったりだ」
 オヤジさんが驚き、感心した。
「そうですね、普通のタクシーより便利だ」
 大柄な運転手が、荷物を載せる。積み終わると、俺たち全員に笑顔で挨拶。真美が、早口で話し合っている。大柄な運転手は、愛想笑いをしながら大きく頷いていた。
「じゃあ、出掛けるわよ。バトル・クリーク市まで一時間だけど、辛抱してね」
 俺は明恵母さんと窓から見える、景色に興味を示す。そこに、オヤジさんも加わる。真美は、運転手と話しが止まらない。時折、大声で笑っていた。
《真美の表情は、初めて見るイメージだ。まったく違う》
 真美が後ろを振り向く。
「何が違うの? どっちが好きかしら・・」
「おい、おい、英語を喋っているのに、俺の考えを盗むなよ」
 真美が、またイメージの違う方法でウインクをする。
「これは、どんな感じかしら・・」
 オヤジさんが笑い出す。
「さっきから、ふたりで何をしているんだい」
「あっ、お父さん。洸輝がつまらない詮索をするから、からかっているの」
「なんだよ、俺は真面目に考えている。どっちが、真美らしいのか比べていたんだ。明恵母さんは、どっちだと思いますか?」
 急に質問された明恵母さんは、困った様子。代わりに、オヤジさんが答えた。
「そうだね、英語で話す真美さんを初めて見たが、大人の女性らしく思えた」
「私も、同じように感じたわ。真美のお母さんに、そっくりよ」
 明恵母さんの言葉に、真美が嬉しそうに反応した。
「やっぱり、そう感じた? このトーマス小父さんが、ママに似てるって言うの」
 真美が、トーマスを紹介した。彼は、真美の母親と親しかった。生きている間は、真美の家に遊びに来ていたらしい。養父のドイツ人とも、釣り仲間だった。

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