ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅣ 

 フワフワと体が揺れガクンと着陸するまで、俺は生きた心地がしなかった。無事に着陸すると、俺は神仏に感謝する。
「洸輝、体が強張っているわよ。大丈夫?」
「ああ、平気だ。なんでもないさ」
 俺は、真美に弱みを見せないよう強がった。
「うっそ、本当は怖がっていたわ。ふふ・・」
《確かに、そうだ。初めてだから、仕方ないよ》
 手荷物をまとめ、前から順に降りる。俺は真美の分まで運ぶ。
「これから、入国審査よ。練習したでしょう。ほぼ、その通りに答えればいいのよ」
「うん、分かった」
 入国審査は必ず一人で受けるので、事前に練習をさせられた。聞き取れない英語に、幾度も失敗した。その度に、真美から注意を受ける。
 明恵母さんが列の最初にいた。俺は、その様子を眺め、俺の脳に復習をさせる。次に、オヤジさんの番だ。幾つかの質問を軽く答えていた。
《まず挨拶して、顔をまっすぐに見る。目的を聞かれる。次に滞在日数。よし、大丈夫だ》
 俺が呼ばれた。足がガクガクだ。パスポートを差し出した。胸が張り裂けるほど緊張する。意外にも、スムーズに審査が済んだ。
「センキュウ・・」
 にこやかに礼を言うことができた。急に心が軽くなる。心配顔の明恵母さんが微笑んでくれた。
「上手くできたようね。洸輝・・」
 真美はアメリカ人専用の入国審査の列から、俺を見ていたようだ。急ぎ戻ると、俺にハグをしながら言った。
「うん、できたよ。ただ、頭の中はボーっとして、俺の軽い脳が勝手に答えていた」
 それを聞いた三人は、大笑い。
「さあ、荷物を探そうか?」
「そうね。私たちの荷物は問題ないと思うけど・・」
「洸輝、荷物検査は私と一緒よ。いいわね」
「はいよ。離れずに、真美のお尻を見ながらついて行きます」
「何言ってんの。洸輝の変態!あはは・・」
 明恵母さんとオヤジさんが、俺たちを呆れた顔で見た。
「まあ、仲の良いふたりね。ふふ・・」
 全員の荷物検査もスムーズに通過し、やっとロビーに出ることができた。

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