ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅢⅩⅧ 

 俺は裸の真美を、怖々と抱きしめる。
《これは幻ではない。本当に、現実なんだ・・。この温もり、真美の温もりが愛しい》
「ええ、幻想じゃないわ。漸く・・、独りの生活から抜け出せた。私は幸せよ・・」
「そうさ、これからは独りじゃない。それに、俺も自分の存在を認め、生きる意識が持てそうだ。真美のお陰だよ、ありがとう・・」
 真美は軽いキッスをした。
「お腹が空いたでしょう? 朝食を用意するからね・・」
 彼女は、恥じらいながら裸のまま浴室へ行く。俺はチッラと後ろ姿を眺めてしまった。
《俺は幸せ者だ。綺麗な姿だなぁ、真美の姿は・・》
「こらっ! 乙女の裸を、勝手に盗み見するな!」
 振り向きキッと睨む。
「ワォ~、前の方がもっと素敵だ! ワッハハ・・」
 顔を真っ赤にして、急いで浴室へ消える。シャワーの音と共に、彼女の明るい歌声が流れてきた。俺はしばらくベッドに横たわり、その歌声を楽しく聞いた。
「洸輝、出たわよ! 早く入って・・!」
 俺は熱いシャワーを浴びる。
《あ~、気持ちがいいなあ~。それにしても、これが新しい俺の生活か。信じられない生活だ。明日になったら、夢が覚めて元の俺に戻る。冗談じゃないよ、俺は絶対に離さないからな》
 浴室のガラス戸が、トントンと叩かれる。
「何?」
「安心して、私が洸輝を離さないから。バスケットに着替えを置いたからね」
「ああ、分かった。ありがとう・・」
 浴室を出ると、真新しい下着と上下の普段着が用意されていた。厚手の紺色のシャツとジーンズ、俺は真美のセンスに驚かされる。
《俺の好みを、本当に良く知っている。何故だろう? 不思議だよなぁ》
「不思議なことなんて、有りませんよ~。あなたは運命の人、だから以心伝心で理解できるのよ~」
 キッチンから大きな声。俺は降参しながら、キッチンを覗く。
「はい、はい、分かりました。ところで、いい匂いがするね。腹ペコだ・・」
「ホットケーキを焼いているから、もう直ぐよ。お湯が沸いているから、コーンスープの素にお湯を入れてね。お願い、ダーリン!」
「あっはは・・、ダーリンって俺のこと?」
「そうよ、何が可笑しいの?」
「だって、初めてだから・・。アハハ・・」
「ウフフ・・、私は奥さまですもの・・。さあ、出来たから食べましょう」

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