続 忘れ水 幾星霜 (別れの枯渇)Ⅳ
翌週の日曜日、ミサの後に洗礼を受けた。洗礼名はマルシア。マルガリータ園長、佐和やマルコスなどが参列して、洗礼の儀式を見守る。神父が、亜紀の頭上に聖水を注ぐ。
《そう、この水が永遠の忘れ水ね》
亜紀の左手の薬指と首かざりの指輪が、一瞬の温もりを感じさせる。それは、輝明が彼女の洗礼を祝福したと亜紀は思えた。
《私は独りぼっちじゃぁ、ないわ》
洗礼後、参列者から祝福のハグを受ける。
礼拝堂を出ると、空を見上げた。真っ青な冬空に幾つかの白い雲。別々の雲が近くに寄り添い、手を繋ぐ様に見えた。
「ママィ、見てご覧よ。あの雲は、パパィとチア千香だね」
空を見詰める亜紀の肩を、そっと抱きしめるマルコス。
「そうね。千香が輝君を誘って、遊びに来たのね・・」