ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅢⅩⅣ 

「私が話すわ。実は、ブリ―リアに子供ができるの」
 黒ピカの代わりに、マリアブリータが説明した。
「なにぃ~、それは・・、お前の子供か?」
「はい、オイラの子供です。そう言われました。でも、ひとりで育てるから、オイラは日本へ帰れと・・」
「いや、お前は残れ! 彼女に、もしものことがあったら、誰が子供たちを育てるのだ。ワシはひとりで帰る」
「ウーッ、困ったな~。育てる自信はありません」
「無責任なことを言うな! ワシと同じことを・・。う、いや・・」
「な、なんですか? リーダー!」
「いや、なんでもない」
 マリアブリータが中に入って、二匹の争いを止める。
「いいえ、彼女ひとりではないわ。ここの仲間全員で育てることにしたの。ブリ―リアはクロピーカの子供たちを育てることで、幸せを得たと喜んでいるわ」
「そうか、分かった。ブリ―リアには、感謝の気持ちと体を大事に労ること、宜しく伝えて欲しい」
「セニョーラ、このまま立ち去りますが、オイラの子供たちをお願いします。チャンスを作って、必ず会いに来ます」
「では、アディオース(さようなら) マリアブリータ!」
「いいえ、アディオースは永遠の別れに使います。私たちは、永遠の別れではありません。チャオ、チャオです」
「そうか、チャオ、チャオだ」
「じゃあ、オイラもチャオ、チャオ! みんな、チャオ、チャオ」
「ご無事に帰国されることを願っています。私の愛する仲間ゴキータとセウ・フィーリョ(あなたの息子)にバイ・コン・デウス(神のご加護を)」
 ワシは、再度ハグしながら囁いた。
「お見通しでしたか。黒ピカは最初の妻の子です。ヤツは無責任な父親が、家族を見殺しにしたと思っている。ワシは、遠くから見守っていました。
 今回の旅には、最初から黒ピカと決めていました。親として、最初で最後の勤めかなと思ってだが・・。ブリ―リアの子供たちが成長したら、黒ピカが誇れる父親であることを話してください。どうか、お願いする」
 もう一度、力を込めてギュッとマリアブリータを抱きしめる。彼女はか細い声を上げながら、小さく頷いた。
「もちろんよ。そして、その父親も誇れると伝えるわ・・。あ~ぁ、ゴキータ・・」
 サントス港には、ブラジルの仲間がケープタウン行きの貨物船まで、案内してくれた。
「黒ピカよ、いよいよ日本に帰れるぞ。また、長い旅が始まる。退屈だが、辛抱しろよ。大丈夫か?」
「はい、平気です」

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