嫌われしもの 遥かな旅 ⅡⅩⅠ
ブリジョンソンのうんざりする長い挨拶が終わり、各大陸代表の報告発表が始まった。
「初めに、ユーラシア大陸代表の方は、こちらへどうぞ」
誰も壇上へ現れない。会場内がざわつき、ワシと黒ピカはキョロキョロと辺りを見渡した。
「お静かに願います。どうやら、ユーラシア大陸代表のイタリアのゴリジェラーノさんは、大会に参加できなかったようですね。それでは、アフリカ大陸代表のボツワナのゴキゴキさん、お願いします」
「皆さん、私はボツワナから来ましたゴキゴキです。宜しく! アフリカの状況を報告します。
私たちの生活は、熱帯雨林が主な場所です。近年、世界の熱帯雨林が年々減少しています。私たちアフリカの熱帯雨林や大草原も、世界的な気候変化によって砂漠化が急速に進んでいます。
それは、先進国の身勝手な近代化と新興国の無秩序な工業化が、世界的な気候変動を引き起こした結果です。
アフリカに生きる動植物は、絶滅寸前の種族が多数います。私たちがいくら叫んでも、人間どもは受け入れてくれません。
特にボツワナは、内戦によって困窮生活の人間が溢れています。そんな人間社会へ、仕方なく移り住む仲間が増えてきました。人間社会の生活は危険です。でも、私たち仲間が生きるためには、選択する余地はありません。
以上、ボツワナの発表を終わります」
ワシはこれが世界の現状だと思い、黒ピカに意見を聞いてみた。
「黒ピカよ、この発表をどう感じた?」
「はい、リーダー。オイラにはとても難しい内容ですね。この問題は、算数と同じく解けません。オイラの仲間には、自ら解決する能力は無いでしょう。だから、自然の風に吹かれるまま、必死に生きるだけでしょう」
黒ピカが、意外な答え方をしたので、ワシは考えてしまった。
「そうだな、お前にしては素晴らしい答えだと思う」
一緒に聞いていたゴキジョージが、ポツリと呟く。
「ハワイの仲間は、幸せな環境に住んでいると思うなぁ」
「えっ、ええ、そんなに素晴らしいところなの?」
「イェッサ~、天国みたいな島だ」
「それ、本当なの? あ~ぁ、あの時に下船したかったなぁ~」
「海に囲まれた島は、常に薫風が吹き樹木は青々と茂る。樹液はたっぷりだ。それに、観光客が多くて、ホテルの残飯はグッディーだよ。むふふ・・」
「なんだよ、にやにやして・・。そのグッディーとは?」
「高級食材の意味さ! クロピーカ、どうだい帰りにハワイへ来ないかい?」
「うん、行くさ。もちろんオイラは行くよ」
「おい、ちょっと待て! 横浜のマダム・イヤーネとの約束は・・。どうするのだ?」