嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅥ
「人間どものペットで、ヘビやトカゲなどの爬虫類だってさ・・」
ブリカーノが説明する。すると、隣のゴキジョージが、にやにやしながら話す。
「だけど、俺たちの品評会を開き、艶の光沢具合や走る速さを自慢する愛好家の人間が、世界中にたくさんいるらしいよ」
「クックク・・」
「ムッフフ・・」
「いや、ワシらの仲間でシナなんとか・・の種族は、血行を促進する漢方薬に使われ、東アジアの人間どもに食べられている。油で揚げるとシバエビの味に似て、美味いそうだ」
ゴキジョージの話で笑いを堪えていた全員が、ワシの突拍子もない話題で大笑いとなった。ワシも、久々に心の奥から笑うことができた。
二日後、カリブ海を抜け、ようやくヴェネズエラ沖の大西洋へ。暇な黒ピカは、英語とスペイン語を仲間から教わる。
「リーダー。中南米なのに、どうしてスペイン語なんだ。スペインはヨーロッパの国だろう」
「これから行く国はブラジルだ。そこはポルトガル語を話す」
「な、なんで、ポルトガル語? ポルトガルだってヨーロッパの国だ。どうして?」
ヤツの頭では無理難題らしく、触角で自分の頭をポカポカと叩く。
「お前は、この旅で世界の歴史を学ぶことだ!」
「ええ、オイラはおバカさんですよ。何も考えずに、生きているだけです。日本の歴史だって難しいのに、他の国を学ぶなんて考えたことも無い」
「いいか、世界を知らぬまま死ぬ仲間が、ほとんどだ。それなのに、外国に来れたお前は、とってもラッキーで幸せものなんだよ」
黒ピカは、パタッと動くのを止め、彼なりに何かを考えている。
「難しい話は理解できないけど、この旅で自分が変わって行くと感じている」
「そうさ、感じることが大切さ・・。感じたことを、日本の仲間に教えることが、お前の役目だ。いいな、黒ピカよ」
「はい、リーダー」
河口の川幅が、三十キロに及ぶアマゾン川。その河口の都市ベレンに入港。アマゾン地帯の隣国からも、様々な形態の仲間が乗船してきた。
その仲間を見た黒ピカとワシは、映画のスター・ウオ―ズの世界に紛れ込んだ気分である。
「リーダー、本当にオイラたちの仲間ですか?」
「うん、自身は無いが、多分そうであろう。言葉がまるっきりわからん」
そこへ、中米出身のゴキーノが近寄って、説明してくれた。
「ベレンから乗ったブラジルのアミーゴ(男性の友)が教えてくれた。あれらは、アマゾンのインディオ語しか話さない。でも、大会には通訳がいるので、心配ないそうです」
「そうか。しかしだな、あの数倍の大きさと鋭い眼光は恐ろしいな。特に、あの目つきはワシたちを信用していない。いつ食われるか心配だ。用心しなければ・・」」